永遠の仔 レビュー

「永遠の仔」 ●久坂優希(中谷美紀) ●長瀬笙一郎(渡部篤郎) ●有沢梁平(椎名桔平) ●早川奈緒子(石田ゆり子) ●久坂聡志[優希の弟] ●久坂志穂[優希の母親] ●久坂雄作[優希の父親] ●長瀬まり子[長瀬の母親] ▼「事件にならない所により救いがあるのかもしれない」 このドラマの核になっているだろう、言葉で書いてしまうとあっさりしすぎている・・・トラウマ。 人間は、名前を与えることでその抽象的な事柄を支配したと言われるが、このトラウマという事柄は、まだまだ分かったようで分からない。 特にこのドラマが扱うだろうトラウマの種類は、心の成長期に刻まれただけあって、もしかすると一生どうしようもない心の基礎の穴なのかも。 冒頭シーンで、思春期時代の彼らは「救い」やら「しなくてはならない」とかひどく強迫観念にとらわれ、殺人まで犯す光景は、ひどく悲しい。私が親にこんな事をされるのは、きっと私が悪いからと感じ、その事に耐えられなくなって抽象的な何かにすがろうとする心意気は、今の宗教のなんたらに似ているような気がする。 この作品は、きちんと原作があって、ミステリーと分類されている事をみると、殺人などの事件が起きるらしいが、本当に考えるべき怖さは、そんな事件という外界の結果よりは、たぶん優希を取り巻く久坂家のベールにつつまれたようなじっとりとした関係の繰り返しなんだと思う。そんな息苦しい繰り返しの中で、自分をしっかり確立し直すのはひどく辛いんだろうなぁと思う。(その立ち…

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永遠の仔 その1「再会」

●久坂優希(中谷美紀) ●長瀬笙一郎(渡部篤郎) ●有沢梁平(椎名桔平) ●早川奈緒子(石田ゆり子) ●久坂聡志[優希の弟] ●久坂志穂[優希の母親] ●久坂雄作[優希の父親] ●長瀬まり子[長瀬の母親] 「お久しぶりです。 私は今、町病院の看護婦をしています。 海が近くて、いい場所です。」 優希から手紙が来た。あれから三年も経っているというのに、懐かしさとか久しぶりだなといった感情は起きなかった。 あぁ、三年か・・という事実確認のみ。 手紙には、何気ない彼女の身の回りの事が書かれていた。世話になっている病院の話、海が近いからそこでの暮らしの話、そして、笙一郎の事。 「・・・あれから、いろいろと考える機会がありました。 こんな事を書くと、何かそれに執着ばかりしているように心配するかもしれませんが、私は大丈夫です。 彼の死や、様々の事を受け入れるまでに時間はかかりました。今も完全に、というわけではないでしょう。波のように引いては返す、そんな感じです。 ただ、最初から今まで、それが苦痛になるような事はありません。 忘れる事もなく、ごまかしもなく、ただすっと身を委ねて生きています。」 最後に、彼女の住所と、病院の住所が明記されていたが、駆けつけようという衝動は起きなかった。 俺は彼女にもう執着しなくなっていた。 夏にでも、遊びがてらに行ってみようと思う。 手紙を読み終え、封筒に戻すと、目的の場所の近くだった。 夏前の成長の…

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美しい人 レビュー

「美しい人」 ●岬先生(田村正和) ●みゆき(常磐貴子) ●次郎(大沢たかお) ●岬圭子(内山理名) ●純(池脇千鶴) ●朝美(森下愛子) ▼「岬とみゆきに出会いました。」  物語はやはり単純に正義対悪ではないと思いますが、 次郎の邪悪性は否めません。 岬先生も完全な正義ではないです。ただ 美しい人。 妻の顔に似せてしまった事の娘や亡き妻への罪などは ゆったりと背負っていくのでしょう。 きっと穏やかに悩み、そて笑う。そんな彼の主義に心惹かれます。 (少し役を演じている正和ワールドでもあるのかもしれません。(^^) 脚本も主義も違いますが、古畑でもそう感じました。) 第4回目の「あなたは・・・・鈍感な人ねっ」とボリジの花言葉を言い、再び沸き上がる恋心を(実は安心して眠っている)みゆきに告白する所では、もう「正和様ー」でした。(^^) みゆきについては、 顔が写る所では確かめるかのような行動をしているので、 最初は違う自分にはしゃいでた部分がありましたが、3回目あたりから 私は違う、逃げれる、でももしこれでばれたら、もし ばれなかったらといった自信と不安が見てとれました。 たぶん一度距離的な拒絶と逃避をしてつかまっているので、中盤以降くわしく精神的な逃避そして対峙への繋がりが みえると思います。 あと、みゆきの、保護者的な愛を明確に拒否した所からは、彼女が、誰かを愛したいという芯の強さを感じました。第2回目の裸足のシーンには期待し、感動できました。…

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美しい人 その2「その後。圭子とみゆきの会話」

●岬先生(田村正和) ●みゆき(常磐貴子) ●次郎(大沢たかお) ●岬圭子(内山理名) ●純(池脇千鶴) ●朝美(森下愛子) 「ママ。後で話があるの。」 朝食をとり終えた圭子はみゆきに向かってママと呼ぶのにも少し慣れた様子だ。 圭子の前には食後のティーを嗜む岬が座っている。そして後ろにはハーブ達が朝日を浴びて、勢いよく呼吸をしている。 「なあに、・・・圭・・子。」 みゆきはまだ圭子の呼び名に少し戸惑っている。 岬は飲み終えたティーカップをキッチンにいるみゆきに手渡すとダイニングを出ていく。 「祥子。少し散歩にいってくるよ。」 あの頃よりは少し言葉少なくなったが彼は今に、過去に、うまくとけ込んでいる。 圭子はその岬の後ろ姿を寂しげな表情で見送る。そして、食器を運んで、みゆきにも・・・ううん微笑みを送る。 「話ってなあに?」 みゆきは圭子から食器を受け取り、微笑みをかえす。圭子はその視線をそらして、後ろ向きに話を続ける。そして、カウンターの上の水槽をのぞく。 「これね。純にもらったの。次郎さんに渡そうと思ったんだけど、ダメだったんだって。」 そこには、赤い金魚が泳いで、ギラギラとうろこが光っている。 「この金魚ね。この金魚もね、水草から酸素をもらっているんだよね。・・パパとパパがああなる前に話したの、・・植物は水とお日様が必要だって。それは愛と環境だって。」 「愛は生きてるのよ。・・先生はそれを教えてくれたの。」 「みゆきさん。・・みゆきさ…

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美しい人 その1 「岬とみゆきの会話」

●岬先生(田村正和) ●みゆき(常磐貴子) ●次郎(大沢たかお) ●岬圭子(内山理名) ●純(池脇千鶴) ●朝美(森下愛子) 「ねえ、先生。私口元のほくろあった方良かったかしら?」 テーブルに座り岬とみゆきは食事をしている。 みゆきの後ろにはハーブ達が並び、薄暗い光の中でもゆっくりと彼らに酸素を送り続けている。 「突然、なんだい」 みゆきに質問されて、すこし頬を緩めて岬はそう返す。彼は独特な微笑みかたをする。その含み笑いをみゆきは好きだ。 「覚えてないの?まずここのほくろをとってって言ったこと。」 みゆきは岬に、ほくろがあった下唇の斜め下の部分を指さして言う。 岬は、その指先と唇を見た。彼女の指先だ。 「口元のほくろってセクシーっていうじゃない?。少し損したかもと思って。・・・・どう今でもセクシーかしら?」 彼女が話している間ずっと岬は彼女の目を見ながら微笑んでいる。 「君は昔も今も綺麗だよ。・・でも、その君は・・どうして、そこから整形してほしいと?」 岬のその質問は軽い。何の意図もない、あるとしたら、彼女を知りたいという欲求のみだ。 岬は持っていたナイフを置きワインのグラスに手を伸ばしながら、またあの微笑みを浮かべる。 「それは、整形医として?個人的な興味?かしら、フフ」 私はその含み笑いが好き。どちらでもいい、いえそれは自惚れね。 「私ね、信じて欲しかったの。口って、相手に何かを伝えようとするでしょ、だからまず口元からって思ったの。あのほくろは…

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アフリカの夜 その1「アフリカの夜」

●杉立八重子(鈴木京香) ●木村礼太郎(佐藤浩市) ●相沢有香(松雪泰子) ●木村 緑(ともさかりえ) ●山室(丸山)みづほ(室井 滋) ●丸山 良吉[総菜屋の亭主] 一人洗濯物を夕方からたたんでいると、空はゆっくりとその明るさを失い、もう建物の中では目の前にある文字も読めないくらい暗くなっている。 少し開けてあった窓から入った湿った空気がふっとカーテンを揺らしている。 お昼の天気予報では今日の夕方には降り出すとの事だったので、その予想は、今現実になる。 ざーと大きな音がして、そのいくつかが、バツバツと窓ガラスに当たるようになったので、私は窓を閉めた。 それでも、部屋の中はもう湿った空気が充満していて、あの時の記憶が思い出された。この暗い、そして湿った空気の中で、礼太郎さんと踊ったダンスの記憶が。 私は雨の夜が好きだ。その一粒一粒に闇からしぼりだされた光の生(いのち)が絡みつき、鬱陶しいほどにまとわりついてきて、生(じぶん)の存在を感じさせてくれるような気がするから。 「ただいまぁー」 玄関の方で、子供の声がする。ドタバタと足音が続き、洗面台の方から水音が聞こえ、そして、また「ママ、ただいまぁー」とまた大きな声で叫んでいるのが聞こえる。 私は遠くて近い、五年という過去の記憶の縁から現実に舞い戻り、たたみ途中の洗濯物を置いて、その声の方へと向かった。 ダイニングのイスに腰掛け、私を待つその子。テレビの電源はすでにONになり、私の方を微笑み混じりで少し見て、またテレビ…

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アナザヘブン その2「綿引の憂鬱」その3「皆月の憂鬱、幕田の憂鬱」

●皆月悟郎(大沢たかお) ●幕田ユウジ(加藤晴彦) ●大石紀子(本上まなみ) ●綿引亜希美(室井滋) ●黒川忠夫[美術商] ●矢野祥子[失踪者第一号] ●稲富圭一[祥子の婚約者] ●吉村香織[失踪者二号] ●木内ルミ[天文サークルでの友人] ●須賀静江[同じく] ●篠原加奈子(新山千春) ●坂木警部 ●両角刑事 ●早瀬マナブ(江口洋介) ●飛鷹健一郎(原田芳雄) ●大庭朝子[早瀬の恋人] ●木村敦(柏原崇) ●柏木千鶴[失踪者兼殺人者] ●笹本美奈(松雪泰子) 「ねぇ、あんたさ、どうして色々な所に首つっこんじまうんだろね。」 綿引が幕田ユウジに笑いながら聞く。 綿引の事務所。幕田ユウジは、黒レザーのリラックスチェアーにもたれた綿引に背中を向けて机の上に座っている。 「えっなんでてすか?」 頭だけ返して聞く幕田。 綿引は、机の端の方にあるライターとタバコに手を伸ばし、腰を浮かせながら話を続ける。 「えっだぁって、そうじゃなぁい。あんた、今回の事件にも、飛鷹や早瀬が追ってた事件にも絡んでいるんでしょ。」 そして、タバコに火を付けて、長めに吸い、煙を吐く。生き返った顔をして、にやけて幕田の返しに気持ちを戻す。 「ええっまあ。でも、絡んでいたというより、ただ知っている位かな?」 ははっと鼻に通る笑いをして、両肘を机について、片方の手はあごに、タバコを持ったもう片方は口元から離して、手のひらを返した。 「知っているって程度じゃな…

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アナザヘブン その1「皆月悟郎と幕田ユウジの会話」

●皆月悟郎(大沢たかお) ●幕田ユウジ(加藤晴彦) ●大石紀子(本上まなみ) ●綿引亜希美(室井滋) ●黒川忠夫[美術商] ●矢野祥子[失踪者第一号] ●稲富圭一[祥子の婚約者] ●吉村香織[失踪者二号] ●木内ルミ[天文サークルでの友人] ●須賀静江[同じく] ●篠原加奈子(新山千春) ●坂木警部 ●両角刑事 ●早瀬マナブ(江口洋介) ●飛鷹健一郎(原田芳雄) ●大庭朝子[早瀬の恋人] ●木村敦(柏原崇) ●柏木千鶴[失踪者兼殺人者] ●笹本美奈(松雪泰子) 「悟郎さん・・屋根がへこんだ・・・買ったばかりなのに・・」 幕田ユウジは、運転しながら悟郎の方も向かずに不満顔で言う。 「悪かったっ」 素直に平謝りの皆月悟郎。ユウジの方はまだ憂鬱な心持ちのようで、少し涙目。 「なんか俺がおまえにやってあげる事ないかな?。」 一歩引いたその態度にユウジはやっと気が引かれた様子。チラッと見て唇を吸って舌で湿らしてから話を持ち出してみる。 「ルミっていいましたっけ、あの人かわいいですよね。」 「ルミ?」 「そうっ」と鼻歌を歌う直前といった御様子のユウジの返事。 悟郎は、車の窓にひじをついて、外を眺めながらつまらなそうにつぶれた声で言う。 カーテンを開いて見てしまった女同士のキスを思い出しながら。 「可能性ないね、諦めた方がいい」 ユウジはチラッと悟郎を見た後、どうして?と聞き、釈然としない顔を前方に戻す。 下顎は手のひ…

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愛をください。その3「心の矛盾」

「愛をください」 ●遠野李理香(管野美穂) ●長沢基次郎(江口洋介) ●葛井昴(陣内孝則) ●葛井昭子[キョンちゃんのママ] ●木場源太(杉本哲太) ●木場静江[カズ君のママ] ●月蜜中也(伊藤英明) ●新藤未明(原沙知絵) ●柿崎保[音楽プロデューサ] 白濁の水面の中から私の手がすっと伸び、無人島のように丸く飛び出た膝のてっぺんを抱えてみる。 お風呂の窓は天井に近く、私からは遠い。そこからふんわりと光が射し込んでくる。 白い光と黒い闇の真ん中の、青白い光が湯気を揺らしてこの個室を満たしている。 どっちなんだろう?。私が葛井の元で一夜を過ごしたという事実を忘れてしまったら、 このぼんやりとした空気の中では、今が夕方なのか、朝なのか、どっちかは分からないだろう。 私が浸かっている白濁の湯は汚れた体を隠すのにぴったりだとも思った。 彼の唇と体を愛撫した私のこの唇も、すっとこの湯の中に浸し、ブクブクと息を漏らした。 水面に達して膨らんだ泡の表面が、一瞬膜のように形づくり、そして緊張が切れ消えていく。 息が苦しくなったから、一気に立ち上がった。 バスタオルに手を伸ばし、持ち上げるとその下に、バスローブと自分の衣服の上にある青空の写真が見えた。 体についた水滴を素早く拭き取って、その写真を口にくわえ、服に着替えた。 拭き終わったバスタオルは、投げ出されて、その重さで床に落ちた。 私はそんな事にも気付かず、バスルームを出ていく。 私が…

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愛をください。その2「幸せの形、そして私の性」

「愛をください」 ●遠野李理香(管野美穂) ●長沢基次郎(江口洋介) ●葛井昴(陣内孝則) ●葛井昭子[キョンちゃんのママ] ●木場源太(杉本哲太) ●木場静江[カズ君のママ] ●月蜜中也(伊藤英明) ●新藤未明(原沙知絵) ●柿崎保[音楽プロデューサ] 人間には二種類いると思う。 幸せか不幸せか・・の二種類。 この事は、私が追求しようとしている事、生きる意義の一つにせざる得なかった性、とは違う所での話です。 自分という人を不幸であると感じた時、周りの他人は全て幸せ、例えば「あぁ彼女はなんて美しい肌をしているんだろ」とか「あの人のバックは素敵だわ」や、「正義感溢れる人になりたい」といった感情が沸くはずで、もし自分が幸せと感じている時は、卑下した言い方ではなくて、他人を不幸だと思うと思う。 そういった意味で、私達は二通りに大別できるのではないかしら?。 夜の街。ガード下で歌う私は、歌の合間にそんな事を考えていた。 私の歌を刹那な時でも聴いてくれる人も、どちらかを考えているに違いない。 この前、そうだあの時は雨が降っていて彼女達しかお客がいなかった特別ステージ、コンビニで買った安っぽいブルーのビニール傘から半分の肩を漏らして雨に濡れていた二人は、そんな事はお構いなしに穏やかな笑顔で私に「リンダ」をリクエストした。 彼女達は幸せだろう。また漠然とその他の人達は不幸だろう。 また、「朝は来る」をお願い歌ってと涙でリクエストしてきた人は不幸だろう。…

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愛をください。その1「愛枯渇的少女」

▼「私小説ちっくな作品にはまってしまう傾向があるんです^^」 作品が良くないとそれはそれで見ないのですが、第一のフィルタはフリーパス。シード権利あり状態になります。 主人公が、(この作品では主に基次郎に対する手紙の紙面上の語りとして)自分の心を表現している事に弱い。 それは、ダラダラと自分の心情を他人に対して述べるセリフという形をとっているより現実味を帯びているような気がするから。 あくまで、表現の手段がセリフから心理ナレーションに代わっただけ?と思うかも知れないが、相手がいないのといるのとでは、違和感が違う。 本当に話せる相手ってのは、本当に少ない。でも、それを自分は聞きたいと思っている。 このドラマには、基次郎という相手がいるけれども、彼とは真実を話す事を約束していて、彼女は彼を信じている。 でも、距離は離れ、会うこともよそうと約束していて手紙のみのやりとり。 彼がいないようでいる感触は、彼女が生きる支えなんですよね。 彼女が基次郎という人を得たのは、人生において大切な一歩。 人は一人では生きてけない。 それは、生活という面での物理的な支えもあるけど、ずーと会っていないけど、裏切れない思い出の人みたいなものも含まれますよね。 それは、誰かを借りた自分自身ではあるところが少し矛盾しているんですけど・・。^^ しかし、主人公はそれが生きること(もっと正確に表現をあてがうなら、死なないこと)への支えにはなってはいるけれど、救われはしていな時点から話は始まって…

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