美しい人 その1 「岬とみゆきの会話」

●岬先生(田村正和)
●みゆき(常磐貴子)
●次郎(大沢たかお)
●岬圭子(内山理名)
●純(池脇千鶴)
●朝美(森下愛子)


「ねえ、先生。私口元のほくろあった方良かったかしら?」
テーブルに座り岬とみゆきは食事をしている。
みゆきの後ろにはハーブ達が並び、薄暗い光の中でもゆっくりと彼らに酸素を送り続けている。
「突然、なんだい」
みゆきに質問されて、すこし頬を緩めて岬はそう返す。彼は独特な微笑みかたをする。その含み笑いをみゆきは好きだ。
「覚えてないの?まずここのほくろをとってって言ったこと。」
みゆきは岬に、ほくろがあった下唇の斜め下の部分を指さして言う。
岬は、その指先と唇を見た。彼女の指先だ。
「口元のほくろってセクシーっていうじゃない?。少し損したかもと思って。・・・・どう今でもセクシーかしら?」
彼女が話している間ずっと岬は彼女の目を見ながら微笑んでいる。
「君は昔も今も綺麗だよ。・・でも、その君は・・どうして、そこから整形してほしいと?」
岬のその質問は軽い。何の意図もない、あるとしたら、彼女を知りたいという欲求のみだ。
岬は持っていたナイフを置きワインのグラスに手を伸ばしながら、またあの微笑みを浮かべる。
「それは、整形医として?個人的な興味?かしら、フフ」
私はその含み笑いが好き。どちらでもいい、いえそれは自惚れね。
「私ね、信じて欲しかったの。口って、相手に何かを伝えようとするでしょ、だからまず口元からって思ったの。あのほくろは惜しかったけど、あれで大きく印象が変わる気がして、・・」
みゆきは岬のグラスにワインをそそいでいる。
「・・・わかる?」と最後に付け加えて、上目遣いに岬をみる。
「目は口ほど真実を語る。でも語るのは口だ。」
「?。フフフ、先生もおかしな事言うのね。少し飲み過ぎかしら・・これで最後ね。」
みゆきはボトルの傾きを緩めて笑いながら言う。
そのボトルに添えられた手は、彼女の手だ。と岬は想う。
心の森の湖畔に、私のあの湖に、彼女が立っている。湖面に写る彼女の顔は、いつぞや湖底に沈めた記憶と同じ顔立ちだ。
彼女は私にそっと手を伸ばしてくる。彼女としばらく、ここで座って語らおう。彼女の手を握り、ゆっくりと確実に・・・・。

「やっぱり飲み過ぎだ。少しぼーとしてるわよ。いくら食がすすむからって飲み過ぎ飲み過ぎっ。・・明日はきっと、先生がハーブの世話になる番ね。フフ」
ボトルを元に戻して言う。
・・・・・。
私も少し酔っているかも。
水面に・・私の姿が写っているわ。そのずーと奥にも・・もうひとり私がいる。いいわ。透明だもの。底まで見えているもの。彼とここで、見守るわ。私の手の中に暖かいものを感じるもの。
・・・きっとそれも自惚れね。フフ。





▲中盤手前位のふたりの会話を想定して書きました。




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