愛をください。その2「幸せの形、そして私の性」



「愛をください」
●遠野李理香(管野美穂)
●長沢基次郎(江口洋介)
●葛井昴(陣内孝則)
●葛井昭子[キョンちゃんのママ]
●木場源太(杉本哲太)
●木場静江[カズ君のママ]
●月蜜中也(伊藤英明)
●新藤未明(原沙知絵)
●柿崎保[音楽プロデューサ]



人間には二種類いると思う。
幸せか不幸せか・・の二種類。
この事は、私が追求しようとしている事、生きる意義の一つにせざる得なかった性、とは違う所での話です。
自分という人を不幸であると感じた時、周りの他人は全て幸せ、例えば「あぁ彼女はなんて美しい肌をしているんだろ」とか「あの人のバックは素敵だわ」や、「正義感溢れる人になりたい」といった感情が沸くはずで、もし自分が幸せと感じている時は、卑下した言い方ではなくて、他人を不幸だと思うと思う。
そういった意味で、私達は二通りに大別できるのではないかしら?。
夜の街。ガード下で歌う私は、歌の合間にそんな事を考えていた。
私の歌を刹那な時でも聴いてくれる人も、どちらかを考えているに違いない。
この前、そうだあの時は雨が降っていて彼女達しかお客がいなかった特別ステージ、コンビニで買った安っぽいブルーのビニール傘から半分の肩を漏らして雨に濡れていた二人は、そんな事はお構いなしに穏やかな笑顔で私に「リンダ」をリクエストした。
彼女達は幸せだろう。また漠然とその他の人達は不幸だろう。
また、「朝は来る」をお願い歌ってと涙でリクエストしてきた人は不幸だろう。
彼は、何も知らない私達に、病院で何年も目を開けない恋人をただ見守るしかない事への不甲斐なさと悲しみの淵を訴え叫んでいた。
彼からしたら、周りの何もかが幸せに見えるだろう。
この事は基次郎、あなたが言った言葉にも通じると思うの。
「幸せは伝染しない。君は幸せという臭いを嗅いだにすぎない。つまり幸せとは、君自身なんだ」。
言葉では納得する。私が幸せであるには、私そのものが幸せという形を成さなくてはいけない事を。
でも、すんなりと、水に溶かした絵の具にティッシュを浸したようにはなりません。
だから、苦しいのです。
世の中に復讐をするだなんて、すごく馬鹿げたこと。
自らの不幸を他人に押しつける行為にも軽蔑を覚えます。
でも、そうする事でしか、今のところと言っておきましょう基次郎さん、幸せを感じられない私はどうすればいいのでしょうか?。
頭では理解しているけど体がね、といった例えでは表せない、もっと根にある歯がゆさは私だけではないのでしうね。
だから、同僚の新藤先生にも、「幸せ?」と聞いてしまった。
「うーん。・・私にだって悩みはあるのよ」との返答に私は「でも、自殺したいとは思った事はないでしょ?」と彼女を困らせてしまった。「それはないけど・・」と言葉詰まりに言い終わり、皿の盛られたパスタに目を伏せてしまう。
その時やっと、私はあぁ私の不幸を見せ物にしたような気がした。
幸せも、不幸も私にかかっているの。
復讐という行為に傾倒する事を必死に踏みとどまめ、それに代わる幸せの形を探し求める私は、重りをつけられた浮き輪のようで、息苦しい。
だから、そんな私を見透かしたように言った 葛井昴 が許せなかったのです。

私は彼の勧めるように彼についていきました。
高そうなレストラン。入り口に立つ案内役のボーイさんと目があって一層入りそびれている私の肩を叩いて、一緒に彼は入ってくれました。
最初は、至極緊張していた。
「私、こんな立派な所初めて。あっ恥をかくまえに前に言っておきますね。テーブルマナーとか全然知らないんです。」
「そう、知らなかった。済まない」と優しく彼は答えてくれた。なぜだろう、その時私は、彼は私の全てを知ってもらう義務があるような気がしたのです。
「私、両親がいなくて、物心ついた時から児童養護施設で育ったんです。だから、こんな贅沢は経験した事がなくて」
と事実のみを丁寧にのべた。悪びれず自然に。
ワインが注がれ乾杯をする。
「何に、乾杯するのですか?」
少しばかり期待を込めた視線と表情で彼に聞くと
「君に会えたことに」
と期待通りの返答をしてくれる。それでも、少し間を置いて言う態度は、ひどく紳士的で彼らしかった。
それから、色々話した。楽しかった。この前、ショットバーで飲んだときとは違う心地よさがあった。保育士と親という関係がすんなりと解け、男と女になっていた。
私が望むべきは、父と子であるのだが、その認識は、両方からの歩み寄りが必要で、足し算と引き算をしたら、きっとまだ男と女という関わり合いでしかないのだろう。
場所を変えて、酔いが回った私は聞いてしまった「幸せですか?」と
彼は冷静に自分を評価してきた。「そうだな、僕は世間一般的には、幸せな部類に入るかな?」と。
その答えを聞いて、少し安心した。ぼんやりとあやふやに答えた木場源太とは大違い。
それなりに肉体的に気持ちが良かったセックスの後、少なくとも彼は私を不快にはさせなかった。ただ、あるとすれば、自分の不潔さだ。
だから、私は一人で逃げた。
いつもとは少し違う経路で保育園に向かう私は、男と女という関係へと自ら下げてしまった自分を恨む。
ただ欲望を満たすだけに処理された子供と親の関係で近親相姦のような、罪悪感だと思う。

それでもなお、どうしようもなく彼についていった。彼のワークスペースであるマンションに足が向かってしまった。入ってきた私に「どうして、一人で出ていったんだ」と問われが、「なんとなく」と嘘をついた。「なんとなくか」とつぶやいて、背を向ける彼を見て、急に寂しくなった。
彼の家族の写真を見つけた時の方が遙かに楽になった。だって、それは不倫の女が妻や子供に対する嫉妬だけなんだもの。
「家族の写真だ・私の写真もここに置いてほしいな」
「何を考えている。
・・何か企んでいるだろう。・・君の心の中には、何か得体のしれないものが潜んでいる。」
「まるで怪物みたい。」と スっと、もうひとりの私が敏感に反応し始める。
その事をゆっくり確認して彼は、話を続ける。
「君を抱いた時、別の冷たい怪物が存在しているようで、私の中にあるぬくもりを全て吸い取られるような気がした。」
私の性を察知されてしまった。恨みだとか憎しみという重りがぐんと重くなって、彼を睨むしか逃れなる事ができなかった。
「ほらその目だ。だが私は、君の憎しみや悲しみに興奮するんだ。
そして君が幸福な人間に対して敵意を持てば持つほど、君の冷たい悪意に欲情してしまうんだ。」
   同じ言葉を私は三回繰り返した。
   最初は、彼にに対して止めてよと思い叫んでいた。
   次には、ぼそりと自分に対して、踏みとどまるために言い、
   最後に、彼の奥にある漠然とした他者に、撒き散らした。

          「なんて事言うのよぉっ!」

境界線がどんどん低くなっていく。沈んでいけばどんなに楽なんだろう。
神様、これは私に対するプレゼントですか?。
彼と別れた後、路地をフラフラと歩み、その後腰からくだけるように金網フェンスに倒れかかった。冷たい涙が頬に滴り流れる。
その失意の私の体に、雨粒がぽつぽつと落ちてきた。
ほんのりと温かい。温かい。



▲「愛をください」二回目。
セリフや、時間軸が少し違いますが、許してください。
トータル的にドラマで表されていた事を書いてみました。
彼女が世の中に対してもっている不幸や幸福の格差への想いと、
幸せ不幸せの個人に関わる形への想いをうまく分けて書いたつもり・・。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック